女性にとって、一番気になる病気ともいえる乳がん。ステージ4まで進行しても生存率は高くなっていることは、前回の記事でお伝えしましたが、やはり心理的・経済的な負担は想像を絶するほど大きいと思います。
もし乳癌(がん)になってしまっていたとしても、早期発見・早期治療すれば、長く生きられる可能性が高まります。
今回は、早期発見が重要な乳がんの医療機関での検診と自己検診(セルフチェック)について、受ける年齢、タイミング、費用などの内容と注意点をお伝えします!
目次
乳癌(がん)検診はどんなことするの?
1:問診
- 年齢、
- 月経の状況、
- 妊娠、出産、授乳の経験、
- 家族にがんになった人がいるか、
- これまで検診を受けた事があるか
などが聞かれます。
2:視触診
上のセルフチェックを医師の目と手で診察していきます。触診では、ある程度の大きさになったしこりを発見できます。風邪を引いた時の診察に近い形なので、身体には負担がかかりませんが、しこりが乳がんであった場合、発見が遅れてしまう可能性があります。
3:マンモグラフィー検査(レントゲン、X線)
この検査では、乳腺は白く、脂肪は黒く、がんやしこりは白く写ります。乳腺密度が高いと乳腺の白としこりの白が重なって、医師でもうまく見分けられない場合があります。
- がんの初期サインである石灰化(しこりの手前)を見つけやすいので、早期発見につながる。
- 過去の写真とその都度比較ができて変化が見やすい。
- 乳腺密度の高い人や若い人は、がんだとわかりにくいことがある。
- 乳房を平に圧迫するので、痛いことがある。
- 問題のないレベルだが、X線による被爆がある。
4:エコー検査(超音波検査)
超音波を使って乳房を検査する方法です。
セルフチェックや視触診では見つからなかったしこりや、しこりの良性悪性の判断に利用されます。がんが黒く見えて乳腺と区別できるため、乳腺密度が高い人や若い人でもがんを見つけやすいと言われています。
- 針やX線を使わないので、身体への負担は軽い。
- 妊娠中の人、マンモグラフィーの乳房の圧迫に耐えられない人、強い乳腺症で撮影が難しい人、頻繁に検査を必要とする人 などに適している。
- 乳腺密度が高い人や若い人でもがんを見つけやすい。
- ちいさなしこりも見つけられるが、良性か悪性の判断がしにくい。
乳がん検診を受ける
日本は、先進国のなかでも、乳がん検診の受診率が低い国です。検診をうけずに、乳がんが進行してしまっている人も多いと思われます。
この記事を読まれて気になった方、40代以上の方は、ぜひ、乳がん検診を定期的に受けて頂ければと思います。
10月の第3日曜日に乳がん検診を受けられる医療機関は「JMSピンクリボンのホームページ」から探せます。
よくある質問 Q&A
Q1:乳がん検診は何科にいけばいいの?
A1:乳腺外科に行きましょう。
Q2:乳がん検診にかかる時間は?
A2:乳がん検診全体では診察と結果説明の時間が加わり、およそ1−2時間かかると考えてください。マンモグラフィー検査は、更衣から写真の確認までで約15-20分程度、超音波検査(エコー)は、15分程度が一般的のようです。
Q3:乳がん検診にかかる費用は?
A3:検診の内容や個人検診、自治体検診などによって変わってきますが、全額自己負担の場合は、マンモグラフィーは5,000円前後、超音波検査は3,500円前後、両方行う場合は10,000円前後。これに診察料金もかかり、合計では、15,000-20,000円ほどかかるようです。
自治体検診の場合は、0ー3,000円など、住んでいる自治体によって変わります。一般的には40代からが検診の対象となっていますが、自治体によっては30代からも検診させてくれるところもあるようです。自治体に問い合わせてみましょう。
Q4:乳がん検診は医療費控除の対象になるの?
A4:検診の結果、異常がない場合は、医療費控除の対象となりません。
万が一、乳がんが発見されて、引き続き治療を行った場合は、乳がん検診の費用が医療費控除の対象になります。(参考:国税庁、医療費控除の対象となる医療費)
Q5:乳がん検診は妊娠中でも受けるべき?
A5:マンモグラフィーは放射線(X線)で被爆するので、妊娠や妊娠の可能性があることを伝えてください。検査方法を検討してもらえます。
Q6:乳がん検診を受けるのは、生理前と後どっちがいいの?
A6:生理後がオススメです。生理前や生理中は女性ホルモン影響で乳房の張りが強くなっています。生理後は、逆に乳房の張りが減っていて、マンモグラフィーや超音波検査なども生理後の方がわかりやすいです。
Q7:乳がん検診は授乳中でも受けられるの?
A7:受けられます。ただし、授乳中の乳腺はよく発達していて乳腺濃度が高いため、マンモグラフィー検診では、わかりにくいので、視触診と超音波検査となります。ただし、正確な診断ができないことが多いようです。
Q8:乳がん検診は何歳から、どのくらいの頻度で受けたらいいの?
A8:30代以下では、遺伝性の乳がんを除き、乳がんはまれであり、検診を受けるデメリットの方が大きいと言われています。
その理由に、
・若い人は乳腺密度が高く、マンモグラフィー検査で乳がんの早期発見が難しいこと、
・超音波検査は、乳がんの発見が、検査者の技術レベルによって左右されること、
などが上げられます。
実際、07年-11年の5年間の平均で、年代別乳がん罹患率は、
30歳未満 0.4%、30-34歳が1.8%, 35-39歳は4.5%となっています。
(参考:国立がん研究センターがん対策情報センターがん情報サービス)
一方で、偽陽性の場合の再検査による精神的・身体的負担のほうが大きいものになりえます。
ただし、家族に30代で乳がんになった人がいる場合は、その年齢より5歳若い年齢から検診を受けた方が良いとされています(参考:昭和大学乳腺外科 明石先生)。
20代から月に1度セルフチェックをしておきましょう!乳がん検診を受けるまでに、微妙な変化に気づけるようになります。
40代からは、2年に1回、乳がん検診を受ける事が国の指針で勧められています。ただし、乳がんリスクチェック項目に当てはまる人は、がんを増殖させる女性ホルモン1年に1回は検診された方が良いでしょう。
いずれにしても、セルフチェックで違和感を感じたら、乳腺外科を受診するようにしましょう。
- 血縁者に乳がん経験者がいる
- お酒を1日2合以上飲む
- タバコを吸う、または、受動喫煙の状態にある
- 脂肪の多い食事をよく食べる(肥満である)
- 閉経をきっかけに太り始めた BMIが25以上
- 生活リズムが不規則
- 経口避妊薬(ピル)を飲んでいる、またはホルモン補充用法を受けたことがある
- 初潮年齢が11歳以下
- 閉経年齢が55歳以上
- 出産経験がない、または初産が30歳以上である
- 年齢が40代以上
Q9:乳がん検診の結果が出るまでの日数は?
A9:触診、エコーはその場でわかりますが、マンモグラフィーは、病院の体制によって違います。即日のところもあれば、大きな病院では画像診断専門医師が1週間後などと日程を決めているところもあります。自治体の集団検診の場合は、1ヶ月後という場合もあるようです。検診の申込時に確認してみましょう。
乳癌(がん)の自己検診(セルフチェック)
乳がんの早期発見・早期治療のために、月に一度の自己検診(セルフチェック)をしましょう。生理終了後1週間以内に行うのがおすすめです。
1:乳房の形をチェック
鏡の前に立って、両腕を下げた状態で左右の乳房や乳首の形を覚えます。
2:乳房を観察する
- 変形
- 左右差
- 腫れ
- えくぼのようなひきつれ
- かさぶた
- 乳頭の湿疹やただれ
などがないかを確認します。
3:仰向けに寝て確認する
立ったままでは確認しづらい場合もある為、仰向けになって確認します。
【乳房の内側をチェック】
左腕を頭の後方に上げ、右手の指の腹で軽く押しながら、滑らせるように、まんべんなく触れてみます。
【乳房の外側をチェック】
左腕を自然な位置に下げ、右手の指の腹で同じようにまんべんなく触れてみます。脇の下にも手を入れてしこりがないか確かめます。
左胸のチェックが終わったら、左右を入れかえて、右胸のチェックもします。
4:触ってチェック
乳房を親指以外の4本の指の腹で「の」の字を書くように触っていきます。乳房全体から脇の下まで、固い部分やしこりがないかを確認します。
5:分泌液が出ていないかを見る
もし血が混ざっていたら、病院で検査をする必要があります。
6:しこりの感覚は「こんにゃくとあずき」で覚える
こんにゃくとあずきを用意します。
お皿の上に小豆をおき、こんにゃくを上にのせて、指の腹で小豆の場所を探してみてください。こんにゃくの上から小豆を触った感覚が、セルフチェックで見つかるしこりに近いそうです。
実際のがんはゴツゴツしていたり、動きが悪かったりしますが、イメージがわきますよね!
万が一しこりや異常を感じたら、すぐに「乳腺外科」を受診しましょう。
乳癌(がん)について
乳がんは、乳房にできるがんで、乳腺から発生します。乳腺は、乳頭(乳首)から放射状に15-20本のびていて、乳管と小葉からできています。乳がんの90%は乳管から出来る乳管がん、10%が小葉からできる小葉がん、と呼ばれます。
乳癌(がん)の症状
- 乳房や脇の下にしこりがある
- 乳房からの乳汁が出てくる(血が混ざることもある)
- 乳房にエクボのようなものができる
- 乳房が赤く腫れたり、熱や痛みが出る
- 乳首がただれる、湿疹がある
乳癌(がん)の種類
乳がんは大きく3種類に分けられます。非浸潤がん、浸潤がん、パジェット病です。
1:非浸潤がん
がん細胞が乳腺にとどまっていて、転移は起こさないがん。ステージ0とも言う。
2:浸潤がん
がん細胞が乳腺を包む基底膜を破って外に出てしまっていて、転移の可能性があるがん。進行度によって、ステージ1−4に分けられます。
3:パジェット病
乳首近くの乳管の中に発生するがんで、特殊なタイプ。乳首の湿疹や赤み、ただれが長く続く場合は、パジェット病の可能性があります。
乳癌(がん)が一番できやすい場所は、乳房の外側上部
発生頻度の高い順に
乳癌(がん)の原因
がんは、活性酸素の攻撃などで細胞の遺伝子異常が蓄積していくことで発生します。
そして、女性ホルモンであるエストロゲンが乳がんの発生と増殖に関係していることが乳がんの特徴。
次のような習慣や状況にある人は、エストロゲンが多く出ていることが考えられ、乳がんになる危険性が高まります。
- 血縁者に乳がん経験者がいる
- お酒を1日2合以上飲む
- タバコを吸う、または、受動喫煙の状態にある
- 脂肪の多い食事をよく食べる(肥満である)
- 閉経をきっかけに太り始めた BMIが25以上
- 生活リズムが不規則
- 経口避妊薬(ピル)を飲んでいる、またはホルモン補充用法を受けたことがある
- 初潮年齢が11歳以下
- 閉経年齢が55歳以上
- 出産経験がない、または初産が30歳以上である
- 年齢が40代以上
乳がんは早期発見で80-90%以上が治ると言われています。もし、上記のリスクに当てはまる習慣があった方は、上のセルフチェックを習慣にしてみてください。早期発見につながるでしょう。
まとめ
乳がんは、女性のがんのなかで一番罹患率が高く、小林麻央さんをはじめ、芸能人でも乳がんにかかった人が多く、気になる病気ですよね。
40歳未満では罹患率が7%未満と高くないので、過度な心配はいらないですが、月に1度のセルフチェックは欠かさず行う事が、早期発見の第一歩となります。
乳がんは、今では、90%以上の人が治る病気と言われていますから、早期発見・早期治療できるようにセルフチェックを月に一度欠かさず行いましょう!
休日でもできる乳がん検診は、
2017年は、10月15日
2018年は、10月21日(予定)
2019年は、10月20日(予定)
2020年は、10月18日(予定)
- 時間がない
- 経済的な負担になる
- 怖い
- 健康に自身があって必要性を感じない
- その気になればいつでも医療機関を受診できる
出典:内閣府大臣官房政府広報室 2015年1月発表より
という事だそうです。
普段はなかなかやっていない休日の乳がん検診もできる(次の10月の第3日曜日=2018年10月21日)医療機関もあるので、ぜひ、この機会に乳がん検診を受けてみてはいかがでしょうか?